ENTiP 弁理士・行政書士の山中と申します。

この「TOPICS」では、士業ならではの有益な情報をお伝えする…

…ことにこだわらず、公私混同上等のコラムも時々投稿させていただいております。

そこで、40年以上、横浜に本拠地を置くプロ野球チームを応援している身として、【不定期ベイスターズ・コラム:勇者の遺伝子(DeNA)は、星や鯨にありを投稿させていただいております。

その1「背番号4へのオールドファンの想い」
https://entip.jp/topics/204/

その2「現代のコーチング:変わるもの・繫がれるもの」
https://entip.jp/topics/259/

「不定期」という設定を存分に活かして、去年は開幕時と、シーズン終了後の1回ずつ…という体たらく(苦笑)。今年は少しは改善を目指して、開幕前にその3を投稿してみたいと思います。テーマは、2023年に日本のプロ野球界に旋風を巻き起こし、2シーズンぶりに復帰してくれた、この投手についてです。

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この男が、横浜に帰ってきてくれると。ホントなんでしょうか。
実際に投げてるところを見るまでは、信じられないなぁ…

…もう信じるしかない。やっぱりホントでした。

トレバー・バウアー投手です。

今更説明もいらないかと思いますが、MLBでサイ・ヤング賞まで獲った投手が、2023年途中にまさかベイスターズに加入、当初は日本の野球への対応に苦慮した面もありますが、その後見事に対応、最終的に10勝4敗という素晴らしい成績を残しました。

しかし、昨年のメキシカン・リーグでのプレイを経て、日本への復帰が噂された頃、個人的には2023年ほどの活躍は期待できないのでは?と危惧していました。

理由は「MLBへの復帰」というモチベーションが、ほぼ失われてしまっていることです。

外国リーグで素晴らしい成績を残し、MLBへの復帰を目指していた彼。実際に日本、メキシコ(10勝0敗)で見事にという素晴らしい記録を残したにも関わらず、MLB  球団のどこからもオファーはありませんでした。いくらいい成績を残しても、もうMLB復帰は叶わない…そんな現実を突きつけられた彼が、2年前のような投球をしてくれるのだろうか、と心配していたのです。

ただ、この発言を聞いて、自分ごときの心配は、杞憂に終わるだろうと安心、いや確信をしました。

「沢村賞」を目指す、という新たなモチベーションです。

戦前、つまりプロ野球黎明期に活躍した豪速球投手「沢村栄治」氏の栄誉と功績を称えて制定された賞ですが、ただ「いい投手」に与えられる賞ではありません。

「完投型先発投手」のみが選考対象

となっているのです。実際、選考基準は以下の7科目:

登板試合数 – 25試合以上

完投試合数 – 10試合以上

勝利数 – 15勝以上

勝率 – 6割以上

投球回数 – 200イニング以上

奪三振 – 150個以上

防御率 – 2.50以下

…最近プロ野球ファンになった方なら、特に目が点になるのは、「完投試合数」と「投球回数」ですかね(※全てクリアーしなければ、受賞できないわけではないのですが)。

そもそも、(先発の登板間隔が)中6日が定着している昨今、登板試合数だって減りがちな中、また「肩や肘は消耗品」というような考えがすっかり定着している昨今、そう簡単に達成できる基準ではありません。

実は、時代の趨勢を鑑みて、補足項目として「先発で登板した全試合に占める、投球回数7回で自責点3点以内」という独自のQS(クオリティ・スタート)基準が2018年から選考に含められてはいるのですが(※一般的なQSは、「6イニングで3自責点以内」)、

それでも、2021年から3年連続で受賞した、山本由伸投手(元オリックス)がMLBに移籍した途端、2024年は「該当者なし」でした。

では、昨年度の審査員たちの、現役時代の主な成績を見てみましょうか。

堀内恒夫さん(元 巨人)

【通算】203勝​139敗​6​セーブ、投球回:3045回、178完投
【シーズン自己最高】
最多勝利数:26勝(1972年)​
最多投球回数:312回(1972年)​
最多完投数:26完投(1972年)​

平松政次さん(元 大洋)

【通算】201勝​196敗​16​セーブ、投球回:3360回2/3、145完投
【シーズン自己最高】
最多勝利数:25勝(1970年)​
最多投球回数:332回2/3(1970年)​
最多完投数:23完投(1970年)

山田久志さん(元 阪急)

【通算】284勝​166敗​43セーブ、投球回:3865回、283完投
【シーズン自己最高】
最多勝利数:26勝(1976年)​
最多投球回数:270回(1971年)​
最多完投数:23完投(1976年)

工藤公康さん(元 西武、ダイエー、巨人、横浜 ※西武復帰)

【通算】224勝​142敗​3セーブ、投球回:3336.2回、116完投
【シーズン自己最高】
最多勝利数:16勝(1991年)​
最多投球回数:223回2/3(1987年)​
最多完投数:23完投(1987年)

斎藤雅樹さん(元 巨人)

【通算】180勝​96敗​11セーブ、投球回:2375.2回、113完投
【シーズン自己最高】
最多勝利数:20勝(1989、90年)​
最多投球回数:245回(1989年)​
最多完投数:21完投(1989年)※11試合連続完投勝利

そう、ただ「たくさん勝った、素晴らしい投手だった」というだけでなく、

とてつもなく「投げた」(登板数・イニング数・完投数)

皆さんな訳です。

しかし、こうした昭和40年代〜平成一桁の時代に活躍したレジェンドの方々が、現役の投手たちに「先発完投」を期待しても、「肩、ひじは消耗品」という考え方が定着した現代では、「そういう時代じゃないんですよ…」と反論する世代間ギャップがあると、言われてきました。

そんな時代に登場した、異質な存在が、バウアー投手でした。日本では中6日(1週間に1回)という先発登板間隔が定着した中で、レジェンドたちがこなしてきた「中4日、場合によっては中3日」を厭わず、しかも一度マウンドに上がったら「勝てるまでは降りたくない」という強い意志。実際、23年には延長10回まで、123球まで投げ抜いた試合もありました。

多く登板するうちに、身につく投球術・経験値もあるでしょう。また、多く投げればそれだけ多く勝てる可能性が出てきますし、それを実現すれば年俸も上がります。また、(いくらリリーフとの分業が当たり前の時代とはいえ)リードするまで投げ抜けば、それだけ勝てる確率も上がるのは当然です。そんな

バウアーのスタイルは、レジェンドたちが実践してきたスタイルと一致

するのです。

一方、そんなレジェンドたちとバウアーが一線を画すのは、「なぜそれだけ投げても、故障をしないのか」「短い登板間隔でも、高いクオリティのパフォーマンスを発揮できるほどに回復できるのか」などについて、

バウアーは科学的な理論を持っている

、ということです。

レジェンド投手たちも、若い頃から鍛えてきた方法、過酷な現役時代に「なんとなく」やってきたルーティーンが、実は科学的に理にかなった鍛錬・休養方法だった可能性はあります。しかし、科学的に証明するデータ/論理的に説明する言葉を、レジェンド世代は与えられてきませんでした(※不摂生だった若い時代から、途中で見直し、最新技術を取り入れ続けて長く活躍された、工藤さんは除くべきかな)。

そんなレジェンド世代と、「データ/理論がないと信用しない」現役世代を繋ぐ役割を、ぜひ、バウアーに果たして欲しいのです。

早速、ベイスターズでは、他の若い日本人選手たち(コーチやアナリストもか)がバウアーを質問攻めにしている気配もありますが(だって、MLBに憧れる若い日本人投手たちなら、「中4日で登板しても壊れない投げ方」を学びたいでしょう)、

ぜひ今シーズンは、

「レジェンド世代の投手たちとの交流」も期待したい

のです。上述の沢村賞選考委員の方々以外にも、東尾修さんや江本孟紀さん、斉藤明雄さんや遠藤一彦さん、江川卓さんや西本聖さんら今でも解説でよくお見かけしますし、YouTubeで積極的な発信をされている佐藤義則さんもいらっしゃいます。他にも、自分が最近YouTubeでお見かけした中でも、鈴木啓示さん、新浦壽夫さん、松岡弘さんらも全然お元気でした。健康状態が許せば、もちろん江夏豊さんとも…。

いい成績を挙げて、ベイスターズのリーグ優勝、ポストシーズン制覇に貢献してくれるだけでは、バウアーへの私の期待は満たされません。ぜひ、「沢村賞」の獲得、そして日本の(新・旧)ピッチャーたちの「ジェネレーションギャップ解消アンバサダー」に就任してください!(…欲張りかなぁ。いやそれぐらい期待してもいいでしょう、この投手には)。